暗い。
はそう素直に思った。
現在が訪れているのはナギサシティのナギサジム。
コンテストに向けてのポケモンたちの調整も終わり、
暇ができたは特に理由もなくデンジに会いに行こうと思い、ナギサジムに入った。
そして、デンジがいるであろうナギサジムの一番奥に向かおうとしたら、突然目の前が真っ暗になったのだ。
因みに、ポケモンバトルで負けたわけではない。
ここのジムトレーナーたちとはすでに顔見知りで顔パス状態で、
ジムリーダーであるデンジにさえ勝利してしまうに、あえて勝負を挑んでくるトレーナーはいない。
ではなぜ、の目の前が突然真っ暗になったかといえば、おそらくデンジのジム改造が原因だろう。
ジムリーダーであるデンジを満足させるトレーナーが中々現れないために、
デンジはバトルよりもジム改造に熱中し、それによってジムが時折停電するのだ。
それを知っているは、はじめのうちは大人しく停電が終わるまで待っていようと思ったのだが、
いつまで経っても回復する気配がない停電に珍しくイライラしていた。

 

「…緑翼、黄妃、いける?」

 

ボールから飛び出したフライゴン――緑翼とビークイン――黄妃にが確認のために尋ねると、緑翼たちは力強く頷いた。
その答えを受けては黄妃の明かりを頼りに慎重に緑翼の背中に乗り込み、
「お願い」と言って緑翼の首を軽く叩いてからぎゅっと緑翼に抱きつくのだった。

 

 

 

 

 

意じゃない

 

 

 

 

 

「この線がここで――って、ライチュウ。これじゃ何も見えな――」
「なにしてるの」
「おわっ!?!?」

 

配線をいじっていたデンジに不意にかかったの不機嫌そうな声。
予想していなかったことの展開にデンジはついていけなかったらしく、
口をパクパクと動かしながらただ呆然として自分のライチュウを抱きかかえている不機嫌そうなを見るだけだった。

 

「直せるよね?」
「えー、あー…も、もちろん」
「なら、早く直して」

 

滅多なことでは感情を表に出さない
だというのに今日のは珍しく怒っている。
相当の気に触ることをしてしまったらしく、
それをすぐさま理解したデンジは慌てて電気を復活させるべく配線を再度いじりはじめた。
幸い、の黄妃のフラッシュの効果ですでにその場だけは明るくなっておりデンジの作業は着実に進む。
だが、不意にデンジは自分の背中にぬくもりを感じてその手を止めた。

 

?」
「……暗いのは得意じゃない」

 

デンジの問いに消え入りそうな小さな声でポツリと答えを返す
そんな縮こまったを見てデンジは彼女を愛おしく思う。
いつもは自分の感情を見せず、どちらかといえば気丈に振舞っている
なのに今の彼女はどうだ?
ライチュウをぎゅっと抱きしめてデンジに背中を預けている姿はいつもの姿と大きなギャップがあった。

 

「すぐ、直すからな」
「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 夢主は暗所恐怖症というわけではありません。ただ、苦手なだけです。
松本的に燃える「背中あわせ」を書きたいがために欲望のまま書いてみました。
因みに、ビークインがフラッシュを使えることにビックリした阿呆です。