「おー見事に満開だな」
「今日は天気もいいし、お花見日和だね」
「……うん」

 

デンジは思った。
どうしてここに四天王であるリョウとオーバがいるんだと。

 

 

 

 

 

緒に

 

 

 

 

 

前々から計画していたとの花見。
天気予想図とテレビの天気予報と睨めっこして決めた日程。
そして、勇気を振り絞って誘った
だというのに、デンジの前にある現実は彼が想像していた状況とまったくもって違う。
大きな桜の木の前での横を陣取るのは自分ではなくリョウとオーバで、
また楽しげに話しているのもリョウとオーバだった。

 

「(なんでこうなるんだよ…)」

 

ガックリと肩を落としてたちの後姿を眺めるデンジ。
その姿にシンオウ地方最強のジムリーダーと詠われる威厳はない。
今のデンジの姿は、ただの恋に焦がれる一人の青年の姿そのものだ。
そんな情けない自分の姿にデンジは思わずため息をつく。
しかし、こうしてもいられない。
せっかく思い切ってを誘ったというのにリョウとオーバだけにいい思いをさせるのは歩に合わない。
自分だってと楽しく話したい。そう思ったデンジが3人の輪に入ろうとしたときだった。

 

「デンジは楽しくないの?」

 

下を向いて考えこんでいたデンジに不意にかかった言葉はからのもの。
滅多に話をふってくることがないからの言葉だけにデンジは「え、いや」と途切れの悪い言葉を返す。
すると、は少し考えるようなしぐさを見せると、デンジの手をとって導くように桜の木の前にまでデンジを引いた。

 

「せっかく来たんだから楽しまないともったいないよ?」
「…ああ、そうだな」

 

に優しい笑みを返してデンジは顔を上げた。
見上げれば宙を舞うのは無数の桜の花びら。その光景は「美しい」のひとことで、
それ以上の言葉は思い浮かばない。不意にデンジがに視線をやれば
もまたデンジと同様に桜の美しさに目を奪われているようだった。

 

「(一緒に見られてよかったな)」

 

の姿を眺めながらデンジはそんなことを思う。
ずっとこんな時間が続けばいいのにと思うが、それは許されることではなかった。

 

、お弁当にしようよ!」
「だな、そろそろ腹減ったぜ」
「…うん、そうだね」

 

の横で微笑んでいたデンジを押しやって出てきたのはリョウ。
リョウがニコニコ顔でに声をかけると、
その後ろからまたデンジを押しやってオーバが笑顔でリョウの言葉を肯定するように口を開く。
見事な四天王コンビのコンビネーションによってまたすっかりかやの外状態になってしまったデンジ。
スムーズすぎることの進み具合に呆然と立ち尽くすデンジだったが、
悪いことというものはそれほど何度も続くことではないらしい。

 

「デンジ?」

 

不思議そうに首をかしげるにデンジは心底救われるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 お花見に行ってきたので夢主たちにも行かせようと考えた結果でした。
裏設定としては、夢主からOKをもらったデンジが浮かれてオーバに話したことで
リョウに情報がもれて妨害されたという設定になっております。
だからちょっとだけデンジは自業自得だったりします。でも、そんなデンジに燃えです。