「ギャロップ!火炎放射!」
「レントラー!放電!」
「うわわわわわ!!」

 

突然の猛攻に少年は反撃するまもなくただ情けない声を上げるだけだった。

 

 

 

 

 

敵登場

 

 

 

 

 

「い、いきなり何なんですか!?」
「いきなりじゃないだろ?オレたちはちゃんと挨拶したぜ?四天王のオーバと」
「ジムリーダーのデンジ」
「い、いや、そうではなくて――」

 

が言い訳しようとすると、不意にオーバのギャロップが飛び跳ねはじめる。
これは完全に攻撃のサイン。
それを本能的に察したはバトルに投じたオオスバメの飛姫とアブソルの危に攻撃に備えるように指示を出す。
そして、ギャロップの後に控えているレントラーに目をやった。

 

「危、不意打ち!」

 

後に控えていたレントラーに危の不意打ちが決まる。
物理攻撃力の高いアブソルである危が放つ不意打ちは強力なもので、デンジのレントラーは危の一撃で地へと崩れ落ちる。
それによってデンジはレントラーを引っ込めて新たなポケモンをバトルに投入しようとする。
しかし、それをは慌てて中断させた。

 

「ど、どうしてシンオウの四天王さんとジムリーダーさんが俺に勝負を挑んでくるんですか!?」
「風の噂で色々聞いてよ。トレーナーとして熱いバトルを望むのは当然だろ?なぁ、デンジ」
「ああ。つべこべ言わずにバトルに集中しろ。いけっ!オクタン!」

 

そう言ってデンジはオクタンの入ったボールを宙に放る。
放たれたボールからはオクタンが飛び出し、即バトルの体勢に入る。
よく育てられているとは感心したが、
すぐに「そうじゃない」と頭を振ってバトルを再開するつもり満々のオーバとデンジに言葉を投げた。

 

「俺、バトルは苦手なんです!だから勘弁してください!」
「おいおい、ホウエンで頂点極めた奴がなに言ってんだ!」
「それに、さっきのアブソルの攻撃はバトルの苦手なヤツが出せる攻撃じゃない」
「まったくだ!ギャロップ、いけッ!」

 

オーバがギャロップに指示を飛ばすとギャロップは大きく一声上げて危へと突っ込んでいく。
それを見ては攻撃を受け流す手立てはないかと頭を働かせるが、
それよりも先にギャロップの攻撃が危に命中しそうになっていた。
思わず「危!」と叫ぶがそれも警告という意味ではもう既に意味をなさないだろう。
そんなときだった。

 

「赤焔ッ!!」

 

危の戦闘不能を覚悟していたであったが、突然ギャロップと危の間に一体のポケモンが入ってくるのが見えた。
ハッとして自分の後ろを見てみればそこには見慣れた少女の姿があった。

 

「「「!?」」」
「赤焔、マッハパンチ」

 

3人の男たちの驚きの声にも少しの動揺も見せずには赤焔――ゴウカザルに指示をあたえる。
そして、の指示を受けた赤焔はギャロップに向かってその拳を打ち出した。
赤焔のマッハパンチを受けたギャロップではあったが、
致命傷には至らなかったようで、倒れこみはせずに何とか持ちこたえていた。

 

「オイ、なんでここにがくるんだよ!?」
「…兄さんと待ち合わせしてたから」
「……そ、そうなのか?」
「あ、はい。そうです」

 

驚くオーバとデンジをよそには随分と落ち着いたもので、
冷静に問われたことに対して答えを返していた。

 

「それで、オーバとデンジは兄さんになにをしていたの?兄さんが困っていたみたいだけど……」

 

不意にオーバとデンジに向けられる殺気。それは意外なことにからのもの。
酷く不機嫌そうな表情をその顔に浮かべて問うはオーバとデンジにとってかつてない恐怖心を駆り立てた。

 

、お、おちついてくれ!」
「ポケモントレーナーは目があったら即バトル!そんな特別珍しいことじゃないぜ!?」
「……2人の肩書きを考えると肯けない」

 

不機嫌そうに眉間にしわを寄せはモンスターボールを片手にデンジとオーバを睨む。
滅多に怒りを露にするようなことのないだけに、
デンジとオーバは慌ててなんとかの怒りを静めようと口を開くが、
はまったくといっていいほど2人に向ける視線から殺気を取り払うことはしなかった。
しかし、そんなときだった。

 

、オーバさんたちの言葉は本当だよ。だから、落ち着きなよ」

 

ぽんぽんとの頭を撫でながらはニコリと笑う。
すると、先ほどまで殺気を放っていたはあっというまに落ち着きを取り戻し、
小さな声で「うん」とに言葉を返した。

 

「(…強敵出現だぜ)」
「(ああ、かつてないほどの強敵だ)」

 

笑顔での頭を撫でるを見つめながらデンジたちは目の前に現れた強敵の存在を危惧する。
そうそうのことでは顔に表情を表さないの前では照れてみたり、喜んでみたりしているのだ。
これはかなりの強敵出現だ。

 

だったな!さぁ、バトルの続きといこうぜ!」
「えぇっ?!中止になったんじゃないんですか!?」
「熱いバトルができそうな相手をそうそう逃がしはしない!」

 

やる気満々といった感じのオーバとデンジ。
しかし、の方はやはり乗り気ではないようで、困惑した様子で右往左往している。
パニック状態に陥っているの肩を不意にが優しくトントンと叩いた。

 

「……兄さん、私がパートナーじゃダメ?」

 

が小首をかしげてに問うとは「うーん」と小さく唸ってからフィールドに出ているポケモンたちに目をやる。
すると、ポケモンたちはこくんとうなずくとの出したボールに戻っていく。
そのポケモンたちの対応を受けては深呼吸ひとつしてオーバたちに答えを返した。

 

「わかりました。このバトルお受けします」

 

がそう言うとあからさまにの表情が明るくなる。
それをみているオーバとデンジはやはり面白くないわけで。
だが、の喜んでいる姿を見ていると悪い気はしなかった。

 

「よしっ、じゃあバトル再開だぜ!いけっ、ミミロップ!」
「ライチュウ!」
「水ッ!ステージオン!」
「赤焔」

 

こうして四天王オーバ&ナギサジムリーダーデンジVSホウエン&シンオウチャンピオンという
豪華な顔ぶれでバトルが開始されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 金剛石夢主は蒼玉夢主が惚れてるんですよ。ということを明らかにしておきたかったがための一品。
金剛石夢主は優しい蒼玉夢主に憧れています。まぁ、厳密に問い詰めていくと「好き」ではなく単なる「憧れ」と思われます。
さぁ、デンジたちは金剛石夢主を振り向かせることができるのでしょうか!!