「そうですか、ホウエンに出かけていたんですか」
「…うん。親戚に会いに」
ゴヨウの言葉にキラは用意された紅茶に口をつけてから言葉を返す。
彼女の言葉通り、キラは親戚に会うためにここ一週間ほどシンオウから離れてホウエン地方に滞在していた。そして、今日はゴヨウにホウエン地方へ行った記念のお土産を届けるためにキラはやってきていたのだ。
「態々ありがとうございます」
「ゴヨウさんにはいつもお世話になってるから…」
そう言ってキラは少し顔を朱色に染めながらゴヨウにホウエン地方のお土産を手渡すのだった。
寂しいから
「ホウエンでは何か面白いことはありましたか?」
紅茶を口元へ運びながらゴヨウはふと尋ねるとキラは「う~ん」と少し悩むような様子を見せるが、
すぐになにか話題を見つけたのか、嬉しそうに話し始めた。
「ホウエンの四天王に会わせてもらったよ」
「ふむ、それはよい経験になりましたね」
「うん。ゴヨウさんたちみたいなオーラを持っててとても強そうだった」
「…でも、負けるつもりはないのでしょう?」
「……うん」
自信満々といった感じでキラはゴヨウの問いに答えを返す。
そんな彼女を見てゴヨウは思う。負けん気の強い子だと。
だが、その自信が彼女の力の源になっているのだから、それはキラという人間にとって欠かせないものなのだ。それに、キラの実力であればホウエンの四天王にも、
本当に勝てるかもしれない可能性があるのだから、己惚れているとも、自信過剰ともいえない。
これは、実力に裏付けされた自信からくるものなのだから。
「本当にホウエンのリーグに挑戦してみてはいかがですか?」
「ホウエンの?」
「ええ、良いバトルの修行になると思いますよ」
ニコリと笑ってゴヨウがキラにホウエンリーグへの挑戦を薦めると、意外なことにキラは腕を組んで「う~ん」と悩み始める。
好奇心旺盛な彼女のこと、ゴヨウは自分の提案を名案だと言ってくれると思っていたのだが、
ゴヨウの予想は外れてキラは好奇心の「こ」の字もない難しそうな表情を浮かべていた。
「なにか都合でも悪いのですか」
「そういうわけじゃないけど…、長期間ゴヨウさんたちに会えなくなるのが寂しいかなって……」
キラの口から出てきたのは意外すぎる言葉。
「たち」が若干余計だが自分に会えないことをキラが寂しく思ってくれることはゴヨウとしては嬉しいことだった。
「キラさんも嬉しいことを言ってくれますね」
「…?」
不思議そうな表情を浮かべるキラにゴヨウは「気になさらないください」と言いながら微笑む。
それを受けてキラは「うん」と言葉を返してきたが、それでもやはり気になるようで不思議そうな表情はそのままだった。そんな不思議そうなキラを尻目にゴヨウは不意に立ち上がり、
自分が普段使っているデスクの引き出しからポケギアをひとつ取り出した。
「…それは?」
「これは、私の予備のポケギアです。キラさんにお貸ししようと思って」
「え…?」
「これがあれば、いつでもお話ができるでしょう?」
笑顔で尋ねてくるゴヨウにキラはぱぁっとその表情を明るくして「うん!」と元気よくうなずく。
可愛らしい笑顔を浮かべて答えを返してきたキラにゴヨウは自然と優しい気持ちになった。そして、ゴヨウはポケギアの初期設定を済ませるとポケギアをキラに預けた。
「これでいつでも話せるね」
「ええ」
にこりと笑ってくるキラにゴヨウもつられてにこりと笑った。
■いいわけ
金剛石夢主がホウエンに行っちゃうよシリーズ第一作。はじまりはゴヨウさんからでした。
ポケッチに連絡機能がないので金剛石夢主にはポケギアを所持していただきました。
しかし、この後ポケギアを持つようになった金剛石夢主に災難が!