「ねぇ、黒鴉。私、どうしたらいいんだろう?」
『……すまない』

 

ポケギアを片手にはドンカラス――黒鴉に問う。
だが、黒鴉は名案も浮かばずお手上げにも近い返答を返した。
黒鴉の返答を受けては「はぁ」と大きなため息をついた。
 
ピピピ…ピピピ…。
 
突然ポケギアが鳴り出す。
これは、音声通信の着信コール音。
それに気づいたはガックリとうなだれていた。

 

 

 

 

 

女の電話事情

 

 

 

 

 

ー元気ー?」
「リョウ……。あんまり元気じゃない」
「えぇ?ホウエンの空気に馴染めてないの?だったら一旦帰っておいでよ!」
「でも、旅費が…」
「それくらい僕が出してあげるよ!今日はもう4人くらい挑戦者を退けてるからね!
…っと!新しい挑戦者がきたから一旦切るね!」

 

 

 

 

 

「ホウエンのトレーナーはどうだ?」
「いい人が多いよ。だから旅もしやすい」
「そうか…なぁ、あとどれくらいそっちにいるんだ?」
「デンジ……、それもう10回目だよ」

 

 

 

 

 

「よぉーっす!リーグへの挑戦は順調か?」
「オーバ…。うん、わりと順調」
「おっ、そうか。ならこっちに帰ってくるのも早くなりそうだな」
「それは分からないよ。これから大変になってくるかもしれないし…」
「なーに、ならあと1〜2ヶ月もあればどうにかなるって!早く帰ってこいよ!」

 

 

 

 

 

「よう!!旅は順調か?」
「あ、ジュン…。うん、順調だよ。ジュンの方は?」
「俺か?俺は勿論順調に決まってるだろ!
今はバトルタワーに挑戦しまくってポケモンたちと一緒に新しいコンビネーションとかコンボ技とかの開発に――」
「(……これは、長くなるね)」
「オイ!!聞いてんのか!?」
「ちゃんと聞いているよ」

 

 

 

 

 

「やぁ、。ホウエンで新しいポケモンはゲットできた?」
「うん、コウキに教えてもらったポケモンとかゲットしたよ」
「そっか、僕の知識が役立ったんならよかったよ。で、いつごろ帰ってくるの?」
「え……、まだまだかかると思うけど…」
「ふぅ〜ん…、どうせだから僕もホウエンに行っちゃおうかな?」
「コウキ、博士の手伝いはどうするの?」

 

 

 

 

 

バトルの最中だろうが、買い物の最中であろうが鳴るポケギア。
そう滅多なことでは感情を表に出さないでさえ、このポケギアの頻繁すぎる着信には頭を悩ませていた。

 

『電源を切ってしまうわけにもいかないからな』
「うん、持ち歩いている意味ないからね…でも……」

 

恨めしそうな視線をは自分の手の中にあるポケギアにやる。
今は誰からの着信もなく大人しいものだが、またこのポケギアは何れ鳴り出すだろう。
それが数分先か数時間先かは分からないが、
何れまたシンオウの顔見知りたちからかかってくるかと思うとは少し憂鬱だった。

 

「はぁ…心配してくれるのは嬉しいんだけどね……」
『(やはり、気付いていない…か)』

 

鈍感な主人の言葉を聞きながら黒鴉は、
少しだけシンオウからに思いを寄せる男たちに同情するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■いいわけ
 金剛石夢主がホウエンに行っちゃったよシリーズ第三弾。
金剛石夢主に振りかかった災難は、彼女の旅と身を心配したシンオウのみなさんからのお電話攻撃でした。
また、電話ネタとかやりたいと思います(笑)