ここはホウエン――トウカの森。
うっそうと茂る木々は太陽の光を遮り、昼間だというのに森全体を暗くしている。
暗いところが苦手なは暗いところに強いドンカラス――黒鴉を横に従えトウカの森を攻略しようとしていた。だが、不意にかかった自分を呼ぶ声に思わずは硬直してしまうのだった。
「やぁ、!」
どうしてここに?
「な、どうしてリョウがここに……?」
「に会いたくてきちゃった」
にっこりと笑って緑髪の青年――リョウははっきりとの質問に答える。
だが、はリョウがこの場所にいることを理解しきれないようで呆然と立ち尽くしている。
そんなを無視してリョウはニコニコと上機嫌での手を取った。
「さぁ、行こっか」
「ちょ、ちょっと待って。…リョウ、リーグはどうしたの?」
「ん?お休みさせてもらってるよ?」
「その…大丈夫なの…?」
「うん、大丈夫だよ。今、ポケモンリーグ自体が今お休みだから」
不安げに問うにリョウは安心させるように微笑んで答えを返す。
リョウの答えを聞いては安心したのか強張っていた表情をやわらかいものに変えた。それを見てリョウは嬉しそうに笑い再度「行こっか」と言っての手を引いた。リョウに手を引かれながらはトウカの森を行く。
だが、の頭に不意に疑問が浮かびは無意識のうちにその疑問を口にしていた。
「どうして私がここにいるってわかったの?」
「それはね、がゴヨウさんからもらったポケギアに秘密があるんだ。
簡単に言うと発信機みたいなものがついてるんだよ」
「あ、だからわかったんだ…」
「……もしかして、ボク邪魔だった?」
少し不安になってリョウはパッとから手を離して問う。
するとは微笑みながら首を振り「そんなことないよ」と優しい口調でリョウに言葉を返した。そして、リョウが離した手を再度は掴んだ。
「リョウが来てくれて嬉しかったよ」
滅多に表情を変えない。
けれど今のはとても愛らしい笑みを浮かべている。
リョウは胸の高鳴りを感じながらもそれを理性で押し留めて、に笑顔で言葉を返した。
「そっか、それは嬉しいな。それじゃ、カナズミシティに向かおうか」
リョウの言葉には「うん」と微笑んで返した。
■いいわけ
夢主が心配なあまりリーグを抜け出してホウエンまで遥々やってきてしまったリョウくんでした。
数日後には帰ってしまうのですが、それまではずっと夢主にべったりだったかと思います。
ポケギアの発信機はもともとついている機能です。だって四天王の持つポケギアですから(何)