「おおぉ…!」と上がる少年たちの感嘆。
それは淑やかに階段を下りてくる――愛らしく、綺麗に、着飾られた秋たちに向けられたものだった。
 真っ白な白いドレスに身を包んでいるのは秋。
左胸と腰元には白と調和するミントグリーンのリボンがあしらわれており、
清楚ながらも少し活発な――秋の爽やかな印象を引き立てていた。
 爽やかな印象を与える秋の隣には、はっきりとした印象を与えるピンク色のドレスを着た春奈。
活発な印象のある春奈にピンク色は甘い――かと思うところだが、
人懐っこく愛らしい春奈のイメージとは調和しており、
淡い桃色ではなく濃いピンク色は、春奈の明るい印象と愛らしさを引き立て、調和させていた。
 そして、その2人よりも上の階段(いち)にいるのは、柔らかな印象を与える白のドレスを纏った冬花。
秋と同じく白のドレスだが、冬花のドレスはややクリーム色に近く、
アクセントとしてあしらわれた黒や紺色の花のコサージュ、
そしてハイウエストのスカートが、冬花の何処か儚げで大人びた印象を、より魅力的に引き立てていた。

 

「はぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜……」

 

 秋たちの姿を前に、幸福かつ、満足そうなため息を盛大に漏らしたのは――
――彼女たちのドレスのコーディネートを主導した
 着る当人(あきたち)の意見を取り入れながらも、
巧みな話術&引くほどの熱意での趣味をだいぶ反映した、イナズマジャパンマネージャー陣のドレスコーディネート。
その仕上がりはの想像通り――いや、想像以上のものとなっていた。
 自分に自分で「グッジョブ!」と心の中で称賛の声を上げながら、
は幸せそうな――気持ち悪いぐらいに締まりのないユルユルの笑顔で、秋たちの姿を眺めていた。
――いつもの黒のつなぎ姿で。

 

「……姉ちゃんは行かないの?」
「私は明日の準備やらの庶務があるからね〜〜。
いや〜夜の英国庭園(イングリッシュガーデン)に映える春奈たちの姿を見れないのは残念だわ〜〜〜」

 

 ピシリとタキシードに着替えた虎丸に尋ねられたは、
言うほど残念がっている様子もなく、虎丸たちに同行できないことを残念だと口にする。
その口ぶりからがイギリスからの招待された親善パーティーにほとんど興味を持っていないことを感じたのか、
虎丸は「そっか」と苦笑いを浮かべて納得の言葉を返した。
 イギリス代表との親睦を深めるためのパーティー――など、にとっては(・・・・・・・)イギリス側の自己満足でしかない。
そんなパーティー(モノ)にが顔を出す必要は――久遠が出席していない時点で、にもない。
まして、既にイギリス側の情報を得ているでは、自ら出向いて情報収集を――と思うほどの興味もなかった。
 身勝手な――と言えば確かにそうなのだが、
幸いにしてにはバックアップメンバーとして、明日やらに向けてやらなければならないことがある。
おかげで真っ当な理由を以って親睦会参加を辞退したわけだが――
――それが建前であることが周知の事実だけに、意味があるかは怪しいところだ。

 

「――あれ?円堂くんは??」

 

 うふふ、あははとご機嫌だったの耳に、秋の不穏な疑問の声が届く。
なんとも言えない嫌な予感に、即座に冷静(いつも)の思考に頭を切り替え辺りを見渡せば――
――黒のタキシードに身を包んだ少年たちの中に、彼らのキャプテンである円堂の姿は見当たらなかった。

 

「………はぁ…、みんなは先に出発した方がいいわね…」
「? さん、円堂くんがどこにいるか知ってるの??」
「いや、知らないけど……
…ここにいなくて、上でバタついてる感じがないってことは――…そういうことでしょ?」

 

 呆れと諦めが混じるの引きつった苦笑いに、
秋たちは「ああ〜……」と苦笑いを浮かべて納得の声を漏らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第146話
済々たる面々と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿舎裏の浜辺で、赤キャップの老人から譲ってもらった巨大なタイヤで特訓でもしているのか――と、
円堂の所在に考えを巡らせながら宿舎を出た――の、視界に飛び込んできたのは、思いにもよらない光景だった。
 青いアイガードをつけたくすんだブロンドの髪を
オールバックにしたアメリカ代表・ユニコーンのユニフォームを纏った少年――ディラン・キースの行く手を阻んだのは、
エバーグリーンの長髪に褐色の肌を持つ同世代の少年たちよりも体格のいい
アルゼンチン代表・ジエンパイヤのユニフォームを纏い、その腕に黄色のキャプテンマークをつけた――テレス・トルーエ。
 しかし、ディランはテレスのディフェンスを退け――るも、その一瞬の隙を突かれ、
ブラウンの髪にグレーブルーの瞳を持った端正な顔立ちをしたイタリア代表・オルフェウスのユニフォームに
同じく黄色のキャプテンマークをつけたフィディオ・アルデナにボールを奪取されてしまう。
 だが、混戦するディランたちの輪から離れたフィディオに、ディランと同じくユニコーンのユニフォームを着た――上に、
腕に緑のキャプテンマークをつけた、ブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳を持った、
フィディオに負けず劣らずの端正な顔立ちをした――マーク・クルーガーが、即座にフィディオの動きに反応し、彼を追った。
 この状況は、やや簡潔に説明すれば――
――イギリスを除くAグループのに属するチームのキャプテン及びスター選手が、
ジャパンエリアのグラウンドでボールの奪い合いをしている、となる。
――誰が、こんな状況を予測できただろうか?

 

「(まったく…、円堂の人運はどうなってるんだかねー)」

 

 Aグループのキャプテンたちがほぼ一堂に会しているこの状況――
――しかも、このメンツで円堂が面識があるのはおそらくフィディオだけ。
ユニコーンコンビに関しては、おそらく一之瀬から円堂の評判を聞いて――と、も想像はつく。
だが、テレスに関してだけは、も彼がどうしてここにいるか想像がつかなかった。
 ただ、円堂の人運が成すところ――と思えば、不思議となんの疑問もないのだが。
 お互いの実力を確かめ合うようにサッカーボールを奪い合う少年たちの姿を横目に、
は関心と好奇心を宿した目でフィディオたちの姿を追っている――ゴール前でポツーンと佇んでいる円堂の元へと足を運んだ。
 このまま、円堂に世界のトップクラスの実力者たちの力を見学させる――というのもアリだと、は思っている。
しかし、円堂が彼らとぶつかるのはまだ先の話――の上に、イギリスとの試合が間近に迫っている現状だ。
未来の対戦者たちにばかり興味を向けていい状況ではない以上――これ以上の延長はなかった。

 

「円堂」
「あ、御麟――………ん?」

 

 が円堂に声をかけると、円堂は「凄いよな!」と
目の前にある実力者たちのプレーに対する感想を伝えんばかりにパァっと表情を明るくする――が、
の無感情な顔に、なにか違和感を感じたらしく、間抜けな声を漏らす――と、

 

「ああ゛ああぁああ―――――っっ!!!?!!」

 

 イギリスとの親睦会(わすれていたこと)を思い出したようで、円堂は顔面蒼白で絶叫した。

 

「あぁっ…あ…!どど、どうしっ……?!」
「…鬼道たちには先に行ってもらったから、アンタはとりあえず宿舎行って着替えてきなさい」
「お、おうっ!――フィディオ、みんな、またな!楽しかったぜ!」

 

 笑顔で彼らとのサッカーを「楽しかった」と言い、円堂は慌てた様子で宿舎へ向かって走って行く。
そんな円堂の後ろ姿に低い声――テレスが「アイツ…なにもしてなかっただろ…」と怪訝そうに漏らすと、
それと打って変わってディランは「ハハッ!面白いヤツだね!」と楽しそうに笑った。
 円堂に対するそれぞれの反応を伺いながら、はこのあとの彼らへの対応をどうするべきか一考する。
イナズマジャパンの一員として、キャプテンの無礼を謝罪する――というのもありだが、
何事もなかったかのようにその場を去る、という選択肢もなくはなかった。
 テレスは円堂が「何もしていなかった」と言っていたことを考えると、
彼らの勝負(ゲーム)に円堂は見ていただけで、直接は関わっていたわけではない――と、想像できる。
であれば、円堂が自分の都合でこのゲームを抜けたことは、彼らにとって問題(ぶれい)ではないはず。
なら、が彼らに謝罪するのもおかしいだろう。…円堂の事(ソレ)に関しては。

 

「…なにか、あったのかい?」

 

 円堂のあとを追う形で宿舎へ戻ろうか――と、思ったところでに声をかけたきたのはフィディオ。
大慌てで帰っていった円堂の様子が気になったらしい。
特に隠すようなことでもないので、はフィディオにイギリス代表から親睦会に招待されたのだと説明した。

 

「イギリス代表から……」
「極東のアジア人を品定め――ってところ?」
「ぇ…いや、さすがにそれは言いすぎじゃないかな…。きっと初めて顔を合わせるチームだから、試合の前に――」
「――どうだかな。イギリス――いや、主催がエドガーなら、そいつの読みもあながち間違ってないだろ」

 

 からかいの色を含めて「品定め」と言ったに対し、
フィディオは「そんなことは」との言葉を否定する――が、それを遮っての言葉を肯定したのは、やや呆れた表情のテレス。
おそらく、の言葉を肯定したことで、イギリス――のキャプテンである
エドガー・バルチナスの「なにか」を思い出して呆れているのだろう。
 ――まぁ、可能性としては、の自虐ネタ(・・・・)に、呆れている可能性もなくはない、が。

 

「なら、合格貰って帰ってきて欲しいところね――騎士様と同じフィールドに立つ資格があるって」
「ぇ、いや……」
「…無理だろうな、アジアのレベルじゃ」
「そう?…ま、それでもいいんだけどね。その方が組み(やり)易いし――
――格下に初戦(でばな)を取ら(くじか)れた騎士様の図っていうのも、見てみたいし?」

 

 とんでもないことを――いや、世界の強豪(テレスたち)から見れば、酷く思い上がったことを笑顔で言ってのけた
それに返ってくるのは、嘲笑、呆れ、怒りで確定――と思われるところだが、
そこは世界を知るだからか、テレスたちから帰ってきた反応は――

 

「――ハッ、お前面白いな」
「面白い――ねぇ?笑いを取ろうなんて、思ってなかったんだけど」

 

 可笑しそうにを「面白い」と評価するテレスに、が笑いを取る(そんな)つもりはなかった、と返せば、
テレスはますます可笑しそうに笑い――「イイぜ、お前」と、に対する好感を口にした。

 

「その物怖じしない物言い――女のクセに度胸あるな」
「ふふふふふー、その言われ方、物凄く腹立つけど、
他国の選手殴ったとあっては大問題だから――FFIが終わるまでは、この握った拳は引っ込めておくわ」

 

 女のクセに――というテレスの言い様に、ブチッと頭の血管が切れ――かけただったが、
さすがにいつか戦うチームの選手を、アドバイザーといえどイナズマジャパンに属するものが殴ったとあっては大問題――
――…いや、人を殴った時点で問題は問題なのだが、そこをグッと「殴らせろ」と唸っている右手を引っ込め、
僅かに眉間に皺を寄せながらも笑顔を浮かべて、が「今は(・・)我慢する」とテレスに返答を返す。
 すると、さすがに今回の返答は、売り言葉に買い言葉――
――冗談の色を含んでいるようで含んでない、本気(マジ)の「殴るぞ」宣言だとテレスも理解したらしく、
笑顔のに表情を引きつらせた――が、それは一瞬で、その次の瞬間には「イイぜ」と切り返した。

 

「お前のチームがもしジ・エンパイア(おれたち)に勝てたら――気が済むまで殴られてやるよ」
「あら、気が済むまでなんて――攻められるのがお好き?DFだけに」
「ハッ、DFの醍醐味は、相手の全てを完全に封じ(つぶし)た時さ――お前のチーム(きぼう)も潰すぜ?」

 

 からかっているよう――で、どこか本当の闘争心をちらつかせるテレス。
無関心だったはずのイナズマジャパンとの試合に、僅かながら興味(やるき)を持たせてしまった――かもしれない。
 そりゃ、格上とはいえ、無関心のガードゆるゆるの油断・慢心パレードの相手に勝ったところでその勝利に価値はない――
――が、今回に限っては勝てる試合は勝っておきたい、というのがの本心だ。
その点から考えると、テレスがイナズマジャパンのアドバイザー(じぶん)に興味を持ってしまったのは――大変都合がよろしくなかった。

 

「私のチーム――ねぇ?なら、FFIが終わった更に後の話になるわね」
「…は?なに言って――」
「イナズマジャパンは私の(・・)チームじゃなくて、私が関わっているチーム。
…まさか、私とアイツらの実力が同等――と、思ってたわけじゃ、ないわよねェ?」

 

 完璧な笑顔を浮かべ、背後にどす黒いオーラを纏い――
――がテレスに脅せ(とえ)ば、テレスは先ほどまでの強気が嘘であったように
「思ってない、思ってない」と首と手まで振って、に否定を返す。
 そのテレスの返答を受け、が「ならいいけど」と笑顔を消して納得すると、
テレス――と、なぜかフィディオまでが安堵の息を吐いた。
 …いや、フィディオの安堵の息には、も心当たりがあるのだが。

 

「フィディオくん?」
「! な、なんだい…?」
「まさか、とは思うけど――私を仮想エンジに見立てて自分の力を図ろう、とか思ってた?」

 

 笑顔で問うたに対し、答えを返さなければならないフィディオ――は、
今にも卒倒しそうなほどに顔を青くして、明後日の方向へ視線を向けている。
一切言葉は返していない――が、これはもう「答え」を返しているに程近かった。
 ただ、このフィディオの返答を受けて、に怒るつもり――いや、的には、怒る権利もないぐらいに思っている。
とはいえ、癪に障ることに変わりないので、わざわざ怒れないことをフィディオに伝えるつもりは、にないが。

 

「…まぁ、キャプテン(フィディオ)くんだしね――今回は、特別に付き合ってあげる」
「――へ?」
「知りたいんでしょ?エンジとの実力差。
さすがに完全再現とはいかないけど、シュート以外なら大体再現できるし――十分でしょ?」

 

 そう言って、はフィディオたちの輪を離れ、グラウンドの中ほどへと移動する。
エンジの再現――と簡単に言ったが、今のエンジの情報の多くを持ち合わせないにとって、
今のエンジの再現は実のところ結構な大仕事だった。
 おそらく、基本的なプレースタイルは変わっていない。
身体能力は以前見た程度と、チームメイトであるフィディオたちの実力を見れば大体見当が付く。
しかし、テクニックに関してはかなり未知数――と言ってよかった。
元々、テクニックに元を言わせるタイプではなかったし、加えて試合経験――
――対人の練習が少ないとなれば、レベルアップはかなり難しくなるはずだが――

 

「――…ちょっと待て。まさかアンタ…………『』、か?」

 

 唐突に、どこかうろたえた様子で「なのか」とに尋ねたのは――テレス。
内心、なんとなく「ああ」と納得しながら、がテレスに肯定――テレスの言うであることを伝えると、
テレスの表情は一気に酷く迷惑そうなものに変わった。…ただ、それもには想像の範疇だったが。

 

「…迷惑……だった?」

 

 苦笑いを浮かべ、がテレスに「迷惑か」と尋ねる。
するとテレスは腕を組み、複雑そうな表情を見せた後――
――やっぱり迷惑そうな表情で「いや」と、に対して迷惑ではなかったと答えた。

 

「迷惑はしてるが………感謝もしてる」
「……そう、ならよかった。
…『あんなになって迷惑している。どうしてくれるこの精神的疲労』――とか言われたらどうしようかと…」
「…まぁ、そう思う部分もあるが――お前の反応からいって、お前も被害者(こっち)側みたいだからな…」

 

 ため息をつきそうに言ったテレスの声に含まれているのは同情。
基本、同情を受けるなどは真っ平ご免なのだが、今回に限ってはそれはありがたかった。
都合うんぬんもある――が、これは同情という名の被害者同士の共感なのだから。
 とテレスの共通の加害者(ゆうじん)とは、ジ・エンパイアに所属する花形ストライカー――アストル・サエンス。
華麗なボールさばきに、強烈なシュート力。加えて端麗な容姿から女性人気が高く、
ジ・エンパイアにおける二枚看板――テレスと肩を並べるほどのスター選手だ。
 ファンに対する愛想がよく、フェミニストで紳士的――と、ファンの間では評判のアストル――通称・アスだが、
仲間たちからの評判は微妙だ。ファンに対する愛想がいい――と言えば聞こえはいいが、裏を返せは一種の女好き。
練習そっちのけでファンの相手をすることもあるというが、試合ではきっちりその役目を果たすし、
やる時はきっちり結果を残すタイプでもあるので、それだけに怒るに怒れない――というなんとも心労の溜まる存在なのだ。
…まぁ、なにより面倒くさい(つかれる)のは――あの意味不明な方向への暴走だが。

 

「――フィディオ、俺も混ぜてくれよ」
「……え?…どうしてテレスがエンジのこと……」
「ああ、エンジに興味はない――が、そいつのプレーには興味がある。アスの惚れた――プレーヤー(・・・・・)だからな」

 

 挑発的な色を宿したテレスの視線と、困惑と僅かな気体が混じるフィディオの視線が、に向けられる。
それを受けたは「ふむ」と腕を組んで一考する。
不足の多いエンジの再現と、ただ自分のプレーをすればいいだけ――当然、後者の方が簡単だ。
しかし、の最終的な決定を左右するのは、簡単か否か、面倒か否か、ではなかった。
 結局、いつ何時においても、の決定を左右するのは――が興味を持てるか否か、だ。

 

「私は構わないけど――フィディオくんは?」
「…オ、オレ、は………、…その、オレも……と、プレーしてみたい……かな…」

 

 やや恐縮した様子で、エンジの再現ではなく、自身とのプレーを希望するフィディオ。
おそらく、テレスとのやり取りを見ていた中で、オルフェウスのキャプテンとしての役目よりも、
一サッカープレーヤーとしての欲求の方が勝ったのだろう。
 目の前に強いプレーヤーがいる。
その上、そのプレーヤーと一緒にプレーできる――となれば、二つ返事でプレーを了承するのが、
強さに貪欲な(いちりゅうの)プレーヤーというものだろう。

 

「それじゃあ――」
「Hey!ならMeも混ぜてよ!」

 

 ゲームを始めようとしたのセリフを遮った――のは、底抜けに明るいディランの声だった。
 たちのゲームに混ぜて欲しいと言うディラン。
だが、相棒であるマークを含めた「たち」ではなく、自分自身だけを仲間に入れて欲しいと言う。
そのディランの言葉にテレスとフィディオは驚いた表情で、楽しげなディランと、
自分たちの輪から少し距離を置いて見守るつもりでいるマークの姿に、少し不思議そうな視線を交互に送っていた。
 おそらく、彼らの仲の良さを知っているだけに、2人で――というのが彼らにとっては意外なのだろう。
それでも、ディランがゲームに参加すること自体には賛成のようで、
がディランが加わることを了承すると、2人もディランに了解の言葉を返していた。

 

「――それじゃ、早速はじめましょうか」

 

 ゾクリと奔る心地よい悪寒に、笑顔を嗜虐の混じる性悪なものに歪め、
は――一時、衝動に任せてサッカーを楽しむことを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■あとがき
 Aブロックのスター選手そろい踏み展開でした。思いがけず絡みが多くて楽しかったです(笑)
マークとの絡みが少なかったことについては、コチラのエピソードにてちょっと語られております。
詳しいことについては、アメリカ戦編で必ずや…!