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Story

 

 魔物と人間が同じ世界で暮らし、魔法が発達したある世界のある時代。
雷光都市フルグルという街に、1人の吸血鬼と2人の狼男が訪れていました。
 少女の姿をした吸血鬼は、黒毛の狼男【コージロー】と白毛の狼男【シロー】を従えて、
資金調達と買い物のためにフルグルの街へとやってきました。

 

 

 昔から贔屓にしている【イムペリウム魔法店】へ買い物へ行くと、
店の店主【ハルナ】が笑顔で迎えてくれました。
 が、ハルナの後ろからここにいるはずのない人物が顔を見せます。

「なっ…!?どうしてお前がここに!?」

 ハルナの後ろから現れたのは、吸血鬼の【ユート】
彼は人里を離れて魔物の研究をしている【カゲヤマ伯爵】の屋敷で暮らしており、
フルグルのような人のたくさんいる街にいるとは想像もしていませんでした。
 というか、違和感なくハルナと一緒に居ることが何より謎です。

「私とお兄ちゃんは血の繋がった兄妹なんだよ!」

 驚きながらもハルナから話を聞いてみると、ユートとハルナは実の兄妹で、
色々あってカゲヤマ伯爵の屋敷を飛び出したユートが、ハルナの元へ戻ってきたのだというのです。
 ユートとハルナが兄妹だったこと。
ユートがカゲヤマ伯爵の屋敷を飛び出したこと。
驚くことばかりですが、よく考えてみれば2人のファミリーネームは【キドー】。
兄妹であることは疑う余地などありません。
 しかし、カゲヤマ伯爵の屋敷を飛び出したことには素直に頷けません。

「どうして伯爵の屋敷を出たのよ?」

「……答える義理はない」

「ほぅ、そーいうことを――」

「騙されたんだ」

「ジロー!?」

 突如として話に割り込んできたのは、
ユートと同じくカゲヤマ伯爵の屋敷にいるはずのアンデット【ジロー】
 いきなりの登場に驚いている面々のことなど気にせず、
ジローは「騙された」という事情を説明し始めます。

「伯爵のヤロー、ピグイノスの研究すると言っておきながら少しも研究しなくてな。
 だから愛想をつかせてアイツの屋敷から出てきたんだ」

「……ジロー、それは明らかにお前だけの理由だな…」

 やや的外れのジローの理由に脱力し、ユートの理由を聞き出す気力を削がれたので、
それ以上ユートに話題を振ることはせず、一度【イムペリウム魔法店】をあとにする事にしました。

 

 

 宿屋で一夜を明かし、資金調達のために街へと繰り出し、
いつも通りのコースで、いつも通りの収穫を得て、宿へと戻ってきました。
昨夜と同じく、いつもいる冒険者たちは出払ってしまっているようで、
宿屋であると同時に酒場でもある【豪雷亭】にしては珍しい静かな空気が保たれています。

「残念ね、最後に一稼ぎしたかったのに」

「みんな、仕事で出払っちゃってて…」

「なんだか嵐の前の静けさって感じだね」

「…シ、シロー、縁起でもない事を言うな」

 相変わらず静かな空気を保ったままの【豪雷亭】。
あまりに静かな空気に、急に眠気が芽生え、
宿の看板娘【アキ】に部屋に戻ることを告げて部屋にもどろ――

「来いッ!!」

「うぉう!?」

 乱暴にドアを開けて宿に入ってきたのはユート。
相当焦っているらしく、有無言わさずして強制連行されてしまいます。

 

 

 ユートに連行されてやってきたのは【イムペリウム魔法店】。
わけもわからず店の奥に入っていくと、そこには涙目のハルナと、
意地の悪い笑みを浮かべている小さな少年がいました。

「……なによ、この状況」

「成立したんだよ。悪魔との契約がね!」

「俺たちを騙して成立させた契約だろう!」

「騙される方が悪いんだよ!
 契約が成立した以上、絶対に払ってもらうぜ!
100万Gをね!」

 

 

 

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